DISEASE INFORMATION

肩関節脱臼

肩関節は、上腕骨頭と肩甲骨で成り立っています。この関節は大きな肩甲骨の皿(関節面)の上に小さなボール状の上腕骨頭が乗っているような不安定な関節です。その構造上の特性から、肩関節は人体にあるすべての関節の中で最もよく動く関節です。そのために人体の関節の中で一番脱臼しやすい関節でもあります。構造が不安定なために、通常では靭帯や腱などの軟部組織がしっかりしています。

関節脱臼をして関節の安定性を失う一番の原因は肩甲骨の関節面で堤防のような役割である関節唇の断裂に伴う関節包の緩みです。関節唇が断裂し肩甲骨から剥がれることによって関節包も破れ、関節包と一体となっている靭帯(関節上腕靭帯)も一緒に剥がれて不安定となります。


診察


レントゲン検査、CT検査で骨折を合併していないか、脱臼による骨のダメージを評価します。MRIで軟部組織の損傷(関節唇断裂・腱板断裂の有無)を評価します。



治療


保存療法


初回脱臼の方はサポーター等による安静治療を1~3週程度行います。安静解除後は徐々に肩を動かしていきます。


〈2回以上の脱臼について〉

肩が脱臼すると肩の関節唇断裂に伴い関節包も破れます。関節包には肩がずれないように働く靭帯(関節上腕靭帯)があるので、関節包が破れると一緒に靭帯も断裂することになります。破れた関節包および靭帯が自然に元の位置に戻って治癒すれば二度と肩は脱臼しませんが、残念ながら一度脱臼、亜脱臼すると肩のゆるみが残り、また脱臼することが多く、いわゆる“脱臼ぐせ” になります。2回以上肩の脱臼は「反復性肩関節脱臼」という病名になり、完治には手術が必要です。


手術療法


鏡視下バンカート法 当院では関節鏡を用いて断裂した関節唇・関節包を修復(縫合)します。脱臼によって断裂した関節唇を修復(縫合)することで、関節包及び靭帯(関節上腕靭帯)も修復され、関節が安定します。
術後4週間は縫合した関節包に緊張をかけないよう三角巾を装着します。術後早期より理学療法士によって首、肩、肘の筋肉をほぐしたり、肩を動かさない状態でリハビリを開始します。術後1~3週から理学療法士によって肩を動かすリハビリを開始します。
個人差がありますが、術後2ヶ月程度で日常生活には不自由がなくなり、6ヶ月で大抵のスポーツ復帰が可能となります。
バンカート&ブリストー法

すべての脱臼の患者様に「鏡視下バンカート法」ができるわけではありません。脱臼に対する再手術の人、肩甲骨のダメージが大きい人、激しいスポーツ(ラグビー、アメリカンフットボール、格闘技など)を行う人は、手術後の再発リスクが高いので、より安定が強固な手術を行う場合があります。
ブリストー法は、肩関節の安定性を肩の関節外で前方の筋肉を補強することで関節が外れないようするというコンセプトのもと生まれた手術方法です。
当院では、前述した関節唇を縫合するバンカート法で関節内を補強し、ブリストー法で関節外から肩関節を補強し、肩関節を安定させます。


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