DISEASE INFORMATION

腱板断裂

腱板とは、肩甲骨と上腕骨をつないでいる筋腱の総称であり、主に棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱があります。腱板は腕を上げる際に非常に重要な筋肉です。



症状


腱板断裂の症状としては肩の運動障害・運動痛・夜間痛を訴えますが、無症状の方もいます。痛みはありますが、多くの患者さんは腕を上げる動作は可能です。ただし、重症の方は、腕の上げる動作が、著しく障害されます。


原因


腱板断裂の背景には、腱板が骨と骨(肩峰と上腕骨頭)に挟まれているという解剖学的特性と、筋肉の老化(変性)があります。明らかな外傷によるものは半数で、残りははっきりとした原因がなく、通常の日常生活動作の中でも、断裂が生じることがあります。


診察


肩の可動域、痛みの部位、筋肉の萎縮があるかどうかを調べます。レントゲン検査、MRIで腱板断裂の有無、程度を判断します。レントゲン検査では、肩峰と骨頭の間が狭くなる方がいます。MRIでは上腕骨上方の腱板に断裂の所見がみられます。

腱板断裂は、専門医でないと診断が難しいこともあり、五十肩と診断される場合も多いようです。五十肩が長期間治らないようでしたら専門医を受診されるようお勧めいたします。



治療


保存療法

腱板断裂と診断された方は、まずは保存療法を行います。断裂部が自然と修復し、治癒することはありませんが、保存療法で痛みなどの症状が軽快する方もいます。保存療法では、投薬・注射・運動療法を適切な時期に適切な方法で行います。腱板断裂と言っても腱板すべてが断裂していることはほとんどないので、保存療法の目的は、痛みを改善させ、残っている腱板の機能を活性化させるのが目的です。

手術療法

保存療法で肩関節痛や運動障害が治らないときは、手術を行ないます。当院では、関節鏡視下手術を行っております。関節鏡下に腱板を上腕骨の本来の付着部に縫い付けます。

※腱板断裂の程度が重症の場合は、大腿筋膜からの筋膜移植を併用します。

高齢者の方で腱板断裂の程度が重症の場合は、人工関節で治療することがあります。

※断裂が術前の想像より重症の場合、完全に修復できないことがあり、その際は部分修復となることがあります。

術後は早期に適切なリハビリを行います。手術後は、4~6週間の装具固定と6ヵ月のリハビリが必要です。個人差はありますが、日常生活復帰は2ヶ月、軽作業が3ヶ月、重労働は6ヶ月で可能となります。


腱板断裂修復術後のリハビリテーション


当院では断裂の大きさや手術の方法によって装具で肩を固定する期間、肩を動かし始める時期が異なります。


小・中断裂の場合


時期 リハビリ内容 固定
術後1日~

・痛みを和らげる

・肩甲骨を動かす

外転枕装具
術後1週~ ・セラピストの介助のもと肩を動かす
術後4週~   三角巾
術後6週~ ・自分で肩を動かす 三角巾除去
術後8週~    
術後3ヶ月~ ・筋力をつける  

大断裂・広範囲断裂・大腿筋膜移植の場合


時期 リハビリ内容 固定
術後1日~

・痛みを和らげる

・肩甲骨を動かす

外転枕装具
術後2or3週~ ・セラピストの介助のもと肩を動かす
術後6週~   三角巾
術後8週~ ・自分で肩を動かす 三角巾除去
術後3ヶ月~ ・筋力をつける  

リバース型人工関節置換術の場合


時期 リハビリ内容 固定
術後1日~

・痛みを和らげる

・肩甲骨を動かす

外転枕装具
術後1週~ ・セラピストの介助のもと肩を動かす
術後3週~   三角巾
術後4週~ ・自分で肩を動かす 三角巾除去
術後3ヶ月~ ・筋力をつける  

リスク管理


外転装具~三角巾の時期


固定をしている時期は手術した手を使うことを禁止しています。反対の手を上手に使いながら生活しましょう。



  • 洋服を着る時

  • 洋服を脱ぐ時


三角巾除去後~術後3ヶ月の時期


手術にて修復した腱板は、術後3ヶ月までが一番再断裂するリスクが高いと言われています。手術=完治ではなく、その後のリスク管理が重要となるため、当院では術後3ヶ月まで下記の5つを禁止動作としてお伝えしています。


  • 水平内転(手術した手を反対の肩にもっていく方向)
  • 後方内旋(手術した手を背中に回す方向)
  • ものを高い所に持ち上げる
  • 手や肘をついて寝る、起き上がる
  • 手術側の肩を下にして寝る


Q&A


夜の痛みで眠れません


夜間痛の原因は明確ではありませんが、夜間のポジショニングで痛みが軽減することがあります。


三角巾除去後の日常生活はどの程度行っていいですか?


基本的に三角巾が除去されると患者様自身で動かす時期になります。退院後、リスク管理に挙げている4動作に注意していただければ日常生活動作は行っても構いません。しかし、無理に動かすと痛みが出る場合があります。まずはできることから始め、徐々に生活に慣れていきましょう。


重い物はだいたいどの程度のものまで持っていいですか?


物を持てるようになるのは三角巾を除去し自分で動かせる時期からです。重さは500g(ペットボトル1本分)までとしていますが、500gでも高い所に持ち上げる動作は負荷がかかりますので行わないようにして下さい。


肩装具について


下記のような場合、術後に肩外転装具を装着していただきます。

・肩腱板断裂で修復を行った場合

・大結節の剥離骨折(脱臼後)の場合


肩外転装具


外転枕装具装着のポイント


装具装着時期は手術側肩を自分で動かすことを禁止します。体拭き、リハビリの時以外はベルトを外さないようにしてください。


  • 力を抜く
  • 肩は左右揃える
  • 肘は肩よりも前になるようにする


肩外転装具の代金について


装具の料金は、入院費とは別の「療養費払い」という制度がとられており、義肢・装具の代金は、納品の際、製作所へ全額お支払い頂くことになります。各種医療保険(健康保険、国民健康保険、各共済組合、労災保険、船員保険など)の窓口にて申請手続きをして頂くことで、その保険の給付割合に従って代金が還付されます。

■療養費払い制度の申請による控除額【肩外転装具代金 40,386円(令和2年現在)】

1割負担の場合 代金の90%(約36,000円)が返金
2割負担の場合 代金の80%(約32,000円)が返金
3割負担の場合 代金の70%(約28,000円)が返金

 


装具装着~装具代申請の流れ


  • 1.手術後に装具を装着した状態で帰室します。
  • 2.手術翌日、装具の調整を行います。
  • 3.全身状態が落ち着いた頃(術後5~7日)義肢製作所のスタッフが病室に伺います。この時に申請についての流れを再度説明いたします。
  • 4.代金の準備ができましたら、装具費用を製作所に支払います。その際、医証・領収書・見積書・請求書をお渡しします。
  • 5.保険者(協会けんぽ等)へ払い戻し(還付)請求の手続きを行います。
  • 6.後日、保険者より、支払った代金から自己負担分を差し引いた金額が払い戻しされます。

※5の手続きには医証・領収書・見積書・請求書が必要です。また、書類の再発行はできません。確定申告等にご使用の場合は予めコピーをお取りください。


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